マイクロソフト、開発者向けクラウド「Windows Azure」を発表

マイクロソフト、開発者向けクラウド「Windows Azure」を発表 : Microsoftウォッチ - Computerworld.jp

AmazonのEC2よりも広い視野・異なる目的で開発──Microsoftチーフ・ソフトウェア・アーキテクト

Microsoftは10月27日、開発者が同社のインフラストラクチャ上でサービスを開発・運用することのできるクラウド・コンピューティング・プラットフォーム「Windows Azure」を発表した。

Microsoftのチーフ・ソフトウェア・アーキテクト、レイ・オジー(Ray Ozzie)氏

同社のチーフ・ソフトウェア・アーキテクトを務めるレイ・オジー(Ray Ozzie)氏は、27日にロサンゼルスで開幕した「Professional Developers Conference(PDC) 2008」で基調講演を行い、「“サービス・ベースの運用環境”であるWindows Azureは、開発者がアプリケーションを開発・運用できるスケーラブルなホスティング環境である」と紹介し、Amazon.comの「Elastic Compute Cloud(EC2)」と競合するものだと説明した。

Microsoft は、Windows Azureのコミュニティ技術プレビュー版(CTP)を米国内向けにリリースし、いずれは同サービスを世界中のデータセンターで運用する予定である。同社の最高経営責任者(CEO)であるスティーブ・バルマー(Steve Ballmer)氏が今月初頭、「数週間以内にWindowsクラウド製品を提供する準備をしている」と公式に話していたため、今回のWindows Azureの発表は想定範囲内の出来事だったと言えるだろう。

ジー氏によれば、 Windows Azureチームのバイス・プレジデントであるアミタブ・スリバスタヴァ(Amitabh Srivastava)氏が率いるMicrosoftの開発チームは、AmazonがEC2を発表する直前からAzureの開発に取りかかっていたという。「当社より早く同種の製品を市場に流通させたAmazonのCEOジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)と同社の開発チームの働きには脱帽した」と、スリバスタヴァ氏は賛辞を送っている。

またオジー氏は、従来のソフトウェアを企業ITネットワーク内で提供および利用するスタイルから、大手ベンダーが運用するクラウド・コンピューティング環境を用い、より多くのアプリケーションをインターネット上で稼働させるスタイルへ移行している現状を踏まえ、「彼らの取り組みを手本にした」と話した。

「しかし、当社はAmazonとは異なり、多数のソフトウェア開発者から成る国際的かつ大規模なネットワークや、当社のインフラストラクチャ・ソフトウェアを使用して開発されたアプリケーションをサポートする責任を負っている。したがって、Amazonよりも広い視野に基づき、異なる目的を持って Azureの開発に臨む必要があった」(オジー氏)

ジー氏は過去を振り返り、クラウド・コンピューティングが仮想化やユーティリティ・モデル以上の進化を遂げた過程を語った。仮想化およびユーティリティ・モデルは、30年以上も前から企業IT システムで利用されており、同分野はオジー氏が以前勤めていたIBMが牽引してきた。

かつて、企業が開発したこうしたネットワークは、自社の社員のみが利用するものと考えられており、ファイアウォールを越えて社外の顧客やパートナーに提供することは想定されていなかった。「構築したシステムを四方を壁に囲まれた社内ユーザーに提供するのと、Webという広い世界へ提供するのとでは状況がまったく異なる」と、オジー氏は指摘している。

ジー氏は、Windows Azureを「開発者がアプリケーションを開発・運用できるスケーラブルなホスティング環境である」と紹介した

ジー氏のあとに登壇したスリバスタヴァ氏は、開発者が慣れ親しんだMicrosoft .NETツールを利用してWindows Azure上でアプリケーションを開発できること、さらにMicrosoft自身もそうしたツールをWindows Azuruの開発に使ったことなど、詳しい説明を行った。また同氏は、Microsoftが同社のすべてのWebベース・サービスをAzure上で運用しようとしていることも明らかにした。

スリバスタヴァ氏によれば、Azureの核となるのは、開発者が開発した「サービスのライフサイクルを管理する」ファブリック・コントローラだという。このファブリック・コントローラによって、「データセンターを共有ハードウェア・リソースのひとかたまりとして認識し、そこで動作している全サービスを含めて、包括的な管理および共有が可能となる」という。こうした特性により、Azureは開発者のアプリケーションを自動的にアップデートし、社内の個々のPCにインストールされているアプリケーションをいちいち更新する手間を省いてくれるのである。

さらにWindows Azureは、Microsoftの仮想化技術を利用して、オペレーティング・システム・レイヤーからアプリケーションを分離するため、アプリケーションのアップデート時にデスクトップPCを更新しなくても済むようになる。こうしたアップデート作業は、企業のIT部門にとって頭痛の種であり、 WindowsクライアントOSの最新版である「Windows Vista」への移行をためらわせる要因ともなっていた。

ジー氏は、Windows Azureの一般提供開始時期は特定しなかったものの、今回のイベントで同プラットフォームに関するより詳細な情報を発表するつもりだと述べた。

Windows Azureの発表 <沙涼譚>

マイクロソフト、Professional Developers ConferenceにおいてWindows Azureを発表(Microsoft PressPass)
Microsoft、クラウドOS「Windows Azure」を発表(ITmedia)
マイクロソフト、クラウド向けサービス「Windows Azure」を発表(Impress Internet Watch)
マイクロソフト、Windowsのクラウド版「Windows Azure」を正式発表(CNET Japan)
Microsoftが2008年10月27日から30日まで開催しているアプリケーション開発者のための開発者会議Professional Developers Conference 2008(PDC2008)でクライド向けの総合プラットフォームのWindows Azureが発表された。

PDC2008で発表されたWindows Azureは、インターネット上にサーバリソースを構築しそのサーバリソースを利用するクラウドコンピューティングのサービス基盤として用意される。Windows Azureが利用するAzure Service PlatformはPCだけでなくウェブや携帯電話といった様々な端末で利用できるようにしており、Azure Service Platform上で様々なアプリケーションを構築・提供することができるようになる。
サービス基盤としてのWindows Azureの上に様々なサービスが利用できる。PDC2008での発表では、リレーショナルデータベースでよく利用されているSQL Serverと同じ機能を提供するSQL Service、.NET Frameworkで提供されるワークフローやアクセス制御といった機能を実装した.NET Service、文書・画像などの情報を多様な端末からでも同じように扱えるようにするためのLive Service、コンテンツ管理やコラボレーションなどを提供するSharePoint Service・Dynamics CRM Serviceと、それらの基盤となるWindows Azureの6つがAzure Service Platformの主要構成要素となる。
Microsoft自身はローカルマシンとウェブをアプリケーションの面で協調させる仕組みとして「ソフトウェア+サービス」(S+S)を提唱しているのだけども、Azure Service Platform上にアプリケーションを構築することで、S+Sをより身近なものにできるようになる。
インターネット上のサーバリソースとしてMicrosoftではアメリカ合衆国で大規模なデータセンタを開設している。そのデータセンタのリソースを利用することになるのだけども、データセンタ自体を複数箇所に開設する予定だという。PDC2008での発表では、既に開設しているワシントン州クインシーのほかにイリノイ州シカゴ、アイルランドのダブリンの名前が出ている。資料映像を見るとデータセンタの配置はアメリカ合衆国とヨーロッパに限定するものではなく、例えばインドや日本といったアジアにも開設していくようにも。
Microsoftのダウンロードセンターには、これを入力している時点でWindows Azure SDKVisual Studio用のアドオンが見つかったりする。これを入力している時点では2008年10月版CTP(Community Technology Preview)となっているのだけども、Windows Vista SP1やWindows Server 2008Visual Studio 2008をインストールしたうえでこれらのソフトをインストールすれば、Windows Azure用のアプリケーションが作成できるということになるのだろう。
ローカルマシンとインターネットの協調利用を実現する環境がMicrosoftから発表された。PDC2008の参加者にはWindows AzureのCTPが提供されているようなので、この時点で大まかな部分で動作する環境が用意できているのだろう。データベースやSharePointo の話が出ているので、どちらかというとWindows Azureは企業向けの色合いが強い感じ。
個人向けの内容がWindows Azureから出てくるのかはわからないけれども、ほかはどこもやっていない全く新しい分野に関する発表なので、強く期待している人もいるんだろうなぁ、と。
雲を意味するクラウド(cloud)の名前をもつ形態に対し、青天を連想させるAzureを持ってきたのはMicrosoftらしい名前だと思う。で、そのWindows Azureは日本語の発音としてどのようになるのだろう。「アジュア」「エイジュア」といったあたりになるはずだけども。

【レポート】PDC2008 - "アマゾンEC2に脱帽"から始まったAzure、クラウド参入の勝算は? (1) Windows Azureが存在感を示すには? | ネット | マイコミジャーナル

カリフォルニア州ロサンゼルスで始まったMicrosoftの開発者カンファレンス「Professional Developers ConferenceNews (PDC) 2008」。1日目の基調講演の舞台に現れたチーフソフトウエアアーキテクト (CSA) のRay Ozzie氏は開口一番、「過去数年にわたる取り組みについて、ついにエンドツーエンドで語れる段階を迎えた。今日はMicrosoftにとって様々な意味でターニングポイントになる」と述べた。そして既報のようにクラウドOS「Windows Azure」とクラウドプラットフォーム「Azure Services Platform」を発表した。MicrosoftクラウドOSについては、PDC開幕前に"Strata"、"Zurich"、"Red Dog"などのコードネームと共に様々な噂が飛び交っていたが、それらをひとつの傘の下にまとめたのがAzure Services Platformだという。


CSAのRay Ozzie氏。PDC2008がMicrosoftのターニングポイントになると宣言

グローバル規模でサービスを展開できる能力がクラウドを手がける企業には求められる

クラウド後発となるWindows Azure

同社内でクラウドプラットフォームのビジョンが初めて示されたのは2005年10月のOzzie氏による「The Internet Services Disruption」というメモだった。コンピューティングアーキテクチャには3つの規模がある。まずMicrosoftのスタート地点である"パーソナル"。個人ユーザーがPCやモバイル端末を利用するエクスペリエンスである。次に大きいのが"エンタープライズ"だ。ビジネスインフラとビジネスソリューションをバックエンドシステムでホスティングする。そのエンタープライズシステムが昨今、グローバル規模でつながろうとしている。3番目の"Web"への広がりだ。実質的に無限の容量、世界中のどこからでもオンデマンドで利用できるハイスケールなインターネットサービス・インフラストラクチャが新たに求められているのが現状だ。

数年前、Microsoftカーネル設計者であるDave Cutler氏とAmitabh Srivastava氏が、これまでに同社が築き上げてきた経験やノウハウ、資産を土台にWeb規模のプラットフォームを構築するプロジェクトをスタートさせた。ところが、その矢先に米AmazonがEC2 (Elastic Compute Cloud)のベータを開始(注:2006年8月)。同プロジェクトは出鼻をくじかれる形になった。EC2についてOzzie氏は、「イノベーションの実現と、設計パターン、構造モデル、ビジネスモデルの構築が産業全体を大きく変えた事実に、私はJeff Bezos氏とAmazonのスタッフに素直に脱帽したい」と、そのインパクトを素直に認めた。ライバルはAmazonだけではない。クラウドコンピューティング分野ではGoogleという強大な存在もサービスを展開している。そのような中で、後発と言えるAzureが存在感を示せるのだろうか?

最上のプラットフォームをデザイン

「AmitabhとDaveのチームが過去数年にわたって取り組んできたのは、クラウドコンピューティングのための我々のプラットフォームだ。"Microsoftの"という点において他と異なり、そして幅広くオブジェクティブである。Microsoftがコンシューマとビジネスに提供している全てのサービスを支える岩盤のような存在、基盤として設計されており、皆さん(会場の開発者)すべてにとっても最上の基盤であるようにデザインされている」という。

以前はISVの1人だったOzzie氏は自らの体験も踏まえて、プラットフォーム企業であるMicrosoftが長い歴史の中で現在でも開発者を惹きつけている3つのポイントを挙げた。まずプラットフォームのカギとなるアプリケーションを自ら構築し、プラットフォームがエンドツーエンドで機能することを実証している。2点目はユーザー規模。大多数のユーザーへのアクセスを保証することで、パートナーは開発に専念できる。ユーザー数もまた、安定したプラットフォームの条件だという。最後がISVやパートナーとの成功の共有である。これらがAzureにも引き継がれる。Amazonクラウドサービスは空っぽの器のようなもので、開発者が自らソフトウエアやソリューションで中を満たす必要がある。一方、Azureはコンピューティング・ファブリックであり、文字通り布地(fabric)に置き換えて考えると、開発者はビジネスロジックに従ったデザインに専念でき、必要に応じて柔軟にサイズを変えられる (スケーリング)。

クラウドを支えるデータセンターの重要性

Ozzie氏はまた、サービスインフラであるデータセンターの重要性についても説いた。1カ所のデータセンターでは、ロードバランシングや冗長性などには対応できても、停電、火災や地震など様々な原因でサービス停止の可能性がある。2カ所にすれば解決するが、その途端にネットワークレイテンシの問題がユーザー体験に影響を及ぼす。しかも2カ所でも充分ではないのだ。グローバル規模で利用できてこそクラウド・コンピューティングである。データセンターを世界的に展開すれば、データやコミュニケーションの問題に加えて、政治的な問題、税金の問題など、解決すべき問題が山積みになる。「これでもクラウドが、われわれが知っている過去よりも便利な世界だと思うか?」と問う。懐疑的になる開発者やIT専門家に、今度は「間違いなく異なる」と答えた。ハイスケールなインターネットサービスをサポートできるインフラを整えれば、そこから全く新しい世界が開けるという。ただし、それを実現できる企業は限られており、そこにMicrosoftクラウドを手がける意味がある。

"Red Dog"プロジェクトを率いてきたAmitabh Srivastava氏は、Windows Azureを「従来型のOSのような1台のマシンのためのOSではない。グローバルなデータセンターのインフラを管理するクラウドのためのオペレーティングシステムである」と説明した。プロセッサからデータセンターまで、幅広い規模のシステムをグローバル規模で扱うインフラは巨大かつ複雑である。 Windows Azureはそれらの複雑性を一手に引き受け、また従来型OSのデバイスドライバに相当する抽象的なレイヤーを提供することでプログラミングの重荷を解消する。


"Red Dog"プロジェクトを率いたAmitabh Srivastava氏

クラウドに対して従来型サーバのプラットフォームを"On-Premise"と表現。2つが共存、補完関係を築けるかも注目点であり、On-Premiseは今後のキーワードになりそうだ

サービスの安定提供を実現するAzure

複雑なインフラにおけるアプリケーションの管理は難しい。従来のコンピューティング・アーキテクチャにおいても、パフォーマンスを引き下げないようにアプリケーションをアップグレードしたり、または基盤のOSだけをアップグレードしたりするのは困難だ。Windows Azureでは、基盤OSからアプリケーションを切り離して管理することで2つのアップグレードシナリオに対応する。ユーザーのサービスの導入からアップグレード、コンフィギュレーション変更などサービスを管理するファブリックコントローラが同OSの中核となっており、同コントローラが全てのデータセンターをファブリックもしくは共有のハードウエアリソースと見なして、そこで動作する全てのサービスの管理・共有を実現する。カスタマーがサービスを変更する場合、ステートを指示することでファブリックコントローラが必要な変更を慎重に実行する。サーバだけではなく、サービスモデルに従ってサービスも管理しながら、柔軟なスケーリングと健全なサービス実行を統率する。またストレージシステムも、アダプティブレプリケーション、自動ロードバランシング、キャッシングなどを用いて、ユーザーの作業を滞らせることなく変化し続けるロードに対応。継続的で安定したサービス提供の実現に寄与する。

Azureの最終版の提供時期、価格やライセンスモデルについては一切明らかにされなかった。「(CTP:Community Technology Previewで) 体験できるサービスやサービスモデルは極めて初期のものであり、また最終的にどのようにロールアウトするかについては、その革新性から我々は意図的に慎重に進めている」とOzzie氏。CTPはあくまでもプレビューであり、今後大きく変わる可能性を伝えた。その一方で、革新的であるからこそ、初期の開発者の協力が、今後の方向性に大きく影響するとした。「あなた方の働きかけによって、プラットフォーム内のより多くの機能へのアクセスが解放され、そしてコマーシャルリリースがより現実を帯びることになる」と参加を訴えた。